24薔薇友訪問記1,井上さんの庭

5月3日、この日から薔薇友宅の訪問が始まりました。
薔薇は太陽が揚がると、強い光でハレーションを起こしてしまうので、なるべく日中を避けるべく9時頃までに訪問しますが、どうしても太陽光が当たると薔薇本来の美しさが表現できません。

ハレーションを避けるために、曇りの日か早朝に訪問しなければなりませんがそれも叶いません。
しかし私が実際眼にしたどのお宅も光景は、ここに画像で表現した以上に素晴らしいものでした。

昨年のブログの薔薇庭訪問記を見るとアップを5月中に終了していました。

今年は5月末に四国旅行を行ったせいか、アップが大幅に遅れてしまいスタートが6月10日になってしまい、5月に訪問した薔薇友の方々には、遅れてご迷惑をおかけしています。

井上さん宅の庭は建物の2階の人工地盤に作られています。

この場所に新築する以前は別な場所で薔薇栽培を行っていました。

井上さんは犬好きでゴールデンレドリバーを飼っていて、現在のお宅は薔薇と犬との暮らしを最適にするために、引っ越して新築したのです。
建物の1階はゴールデン2頭と車庫で、2階は200本近い薔薇のためのスペースでした。

井上さんとのお付き合いは古く、もう30年近くなります。

当時私は、登山を止めてガーデニングを始めてから数年経ち、ついでに犬も飼い始め、休日は家内と普段の散歩道を外れて愚犬を散歩させながら、花の美しいお宅を覗き歩きしていました。

そのため当時家から半径1~2kmの範囲で花と犬を愛好しているお宅とは、ほとんど知り合いになっていました。
そんなある日、井上さんと出会い犬通し仲良くなった関係で友達になりました。当時はお互いに苗字は言わず犬の名前が屋号みたいになり○○クンの家などと、呼び合っていました。
近くに見沼田んぼがあり、住宅街も宅地造成前の空き地が多い時代だったため室内犬はほとんど見かけず中型~大型犬の天国でした。

平日の午後の犬の散歩の係は家内でしたが、こういう環境にあったため家内は多くの犬仲間と共に犬を遊ばせることができました。

こうした中で、井上さんととの出会いは、私に決定的な影響をもたらしたのです。
当時草花を愛好しガーデニングで行っていた私は、ハンギングやプランターハンガーを使用して空間の演出方法をさまざま模索していました。

クライミングローズもその方法の1つで、大して研究もせずに植えた2本のクライマーの花が、剣弁更芯咲きの固い花で風にそよぐ草花と調和せず、どうにかならないかなと想っていました。
そんな時に井上さんの庭に、私がまだ見たことの無いイングリッシュローズのマサコ・イグランティ-ヌとグレハム・トーマスがありました。

植えて2~3年目で、建物に沿って人の背の高さに優雅に伸びている姿を見た時に、これぞ私が求めていた薔薇だと直感したのです。

井上さんは埼玉ばら会に属しており、ばらの動向に詳しく、それらのイングリッシュローズは、岐阜のローズ・オブ・ローゼスから通販で購入したことを知りました。

調べてみると岐阜に県立バラ公園をつくるに当たって、主要なバラをイングリッシュローズとして、導入と輸入を行うために、バラ栽培者の大野さんがローズ・オブ・ローゼスを設立し、同時に英国のデビット・オースチンに倣って裸苗の通販を始めたことが判りました。

いずれにしても井上さん宅でみたマサコとグレハム・トーマスの姿は衝撃的で、あの柔らかな枝と葉、そして無数の花弁が密集したロゼット咲きの花形、そしてどきつさのない自然界に存在するやさしい花色は、私を魅了してしまいました。

井上さんと共にもう1軒の薔薇友は、今は亡き佐藤さんでした。

佐藤さん宅の2階のベランダまで登っていたピエール・ドゥ・ロンサールの姿と、大株に仕上がったアイスバーグを初めて見た時の衝撃は今でも忘れられません。
佐藤さん宅は村田バラ園の施工で庭を造りました。


あれから30年近く経ちますが、デビット・オースチンのグレハム・トーマスとメイアンのピエール・ドゥ・ロンサール、そしてコルデスのアイアス・バーグは永遠のシュラブローズとして現在なお日本中のバラファンを魅了しています。

井上さん宅は基本的なレイアウトは20数年前の新築時と同じです。

今見ても古さを感じないレイアウトと仕立て方は、井上さんが当時研究の末編み出したものなのでしょう。
井上さん宅の現在は、犬は少なくなりましたが、井上さんの趣味のウエイトは薔薇と犬とパーチワークがほぼ三分の一づつ分け合っていたような気がします。

でも作業量からいうと200本近い薔薇の手入れと植え替えなどを考える薔薇のウエイトが大きかったような気がします。

当時次から次へと新しい薔薇を仕入れて植え込んでいく井上さんのエネルギッシュな姿を見ていると、私も大いに刺激になりました。

当時、薔薇の栽培書では株間60㎝を開けろと記載していました。株間60㎝を空けて植えたら、それは薔薇庭でなく野菜畑と同じようにバラ畑になってしまいます。
井上さんの庭の薔薇は鉢間を少し開けて密集していますが、2階のステージが風通しが良いため余り葉も痛んではいません。おそらく葉を維持するためには手入れが欠かさないのでしょう。

井上さんの庭の特徴は階段を上がり主庭に導くアーチの存在です。

アーチは1連でなく3連続いており、それぞれに別な薔薇を仕立てており、異なる空間に誘う一種のローズアベニューの役割を果たしています。
もしこれが一連だけだったら、これだけの深みと奥行きは出なかったでしょう。

一連のアーチを潜って振り返ると3連アーチの奥行きが分かります。

アーチは通路でなく建物の壁面に薔薇を仕立てるために容易な仕立て方であると、当時この井上さんの庭を見て教えられました。
建物の壁面に薔薇を這わして仕立てるのは、建物に穴を開けたり、雨どいを利用してワイヤーを誘引したりとても面倒です。
通路のアーチはある程度見栄えの良いものが必要ですが、壁面仕立てにはアーチは多少ヒナヒナしても自立できるので安価なアーチでも差し支えありません。

私は植え替え頻度が多いと面倒なので、最低3~4年もしくはそれ以上植え替えなくて済む10号か12号の鉢を利用しますが、井上さんは8号もしくは10号を使用して状況を見て2~3年で植え替えしているようです。
唯、今年は体調が芳しくなかったため、余り植え替えをしていないとの事でした。

2階が庭のた植え替え土壌や堆肥などの運搬が大変です。井上さんに比べると私などは相当横着している気がします。

井上さんのリビングから見る庭の光景はまるで夢の空間です。パッチワークを行いながら時折庭に眼をやりながら、花とファブリックスの美空間を味わっています。

庭は南向きの2階のため、終日陽が当たり風通しが良いため、湿気が少なく黒点病のリスクや害虫のリスクはかなり軽減するでしょう。

また当時私は井上さんから複数の薔薇をミックスして仕立てる方法を学びました。井上さんは限られた空間でできるだけ多くの気になる薔薇を仕立てたいたいと思うことから行ったのでしょう。

井上さんの庭ではパレードのようなありきたりの薔薇でも高貴な雰囲気の薔薇に見えるから不思議です。
私は薔薇園の薔薇の仕立てに興味が湧かないのは仕立てが単純すぎるからです。

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井上さんが云う通リ、昔に比べると階段の仕立ては密集度が低くなりました。
でも自分の庭の栄枯盛衰を考えると、20数年間、一度もクオリティを落とさずこれだけの庭を維持することがいかに大変か、リスペクトに値します。

薔薇園と異なって、限られた空間で鉢植えを中心に薔薇庭を造る場合、ランブラーを除いて薔薇の寿命は大型犬と同じ10年位であり、薔薇の最盛期も大型犬と同じように3~5歳であり、美しい薔薇庭を維持するためには、新しい薔薇を購入し絶えず庭の薔薇の平均を5年位に維持しなくてはなりません。薔薇は7年を超えると急に衰えて来て、株元からの枝の本数が減少し樹形にボリュームが無くなってきます。そういう古い株の薔薇だけでは、庭全体に輝きが薄れてきます。
また薔薇はコガネムシやカミキリムシの食害、根腐れなどで寿命を全うできず、5年たたずに死ぬ薔薇も多いです。私も振り返ってみるとここ30年近く前から枯れずに残っている薔薇は数種だけであり、今まで単純に計算してもこの30年間で400本以上の薔薇が、私の眼の前で生老病死を繰り返していたことになります。

多分井上さんも私より遥かに多い薔薇の生老病死を看取り、新たな薔薇を加えて来たのでしょう。それだけ長期間薔薇庭を美しく維持することは大変なことで、井上さんの庭を訪れる時いつも古い戦友という気がしてくるのです。