24薔薇友訪問記2,Sさんの庭

Sさん宅には5月4日訪問しました。
Sさんの庭は完成されており、非の打ちどころがありません。
Sさんご夫妻は、後で知ったのですが私の大学の同じ商学部の同窓生です。商学部の学生はビジネス志望が大半のため、理論より実践、緻密さより柔軟性を重視しやかましい人間が多い傾向があります。クラブの同期も皆同じ傾向で、理屈を好む政経学部のある同期は、晩年企業で商学部出身の後輩2人に抜かれたため、商学部出身者の柔軟性を蔑視していました。
Sさんご夫妻は緻密で理路整然として研究熱心なため、理工学部出身だと想っていましたが、お2人とも私と同じ商学部の出身だと知り驚きました。

10年ほど前、Sさんご夫妻とは薔薇の縁で知り合いましたが、その研究熱心さと緻密さであっという間に理想的な薔薇庭を作ってしまいました。薔薇庭を追求するには美学の素養が必要で、園芸好きな人が誰でも薔薇庭をつくれるわけでありません。庭に2人の主人はいないと言うのが私の持論ですが、ご夫妻共々の感性を駆使してとうとう理想的な薔薇庭を完成したように感じます。

私がガーデニングを始めた時、ある雑誌で英国人の庭に関するエッセイが眼に止まりました。その英国人がジャーナリストで世界を駆け巡り定年後はカントリーに家を求めガーデニングを始めました。彼は文中、庭の植物に落ちた朝露の一滴に宇宙を見ると書いていました。

フランス、ドイツなど大陸諸国と異なって、英国も日本も海洋の中の島国のため、空気中に水蒸気を多く含むことが共通しています。3㌔先の建物の窓までくっきりとできるライカのカメラで撮影した大陸諸国と異なって英国や日本では、花色もビビッドカラーよりもソフトカラーが好まれます。まして庭の朝露の一滴に美を感じる感性は、水蒸気の多い島国故に育まれるものなのでしょう。Sさんご夫妻には、庭というお2人の宇宙が完成したような気がしています。


車庫の前面に大型のアーチが設置され、ブラン・ピエール・ドゥ・ロンサールが見事に仕立てています。

正面ゲートのアーチには、ハイブリット・パーペチュアルのスブニール・ドゥ・ドクトル・ジャーメインの見事な赤紫の花が迎えてくれます。オールドローズの中で19世紀の終わりに誕生したハイブリット・パーペチュアルが多くの赤紫の薔薇をもたらしました。右はデュセス・ダングレームがガリカとしては珍しく大型になってフェンスを覆っています。

実は左側の車庫の壁面が圧巻なのですが、朝日でハレーションを起こしているため見事な壁面の画像を掲出できません。ピエール・ドゥ・ロンサールを挟んでブルボンのマダム・ピエール・オジェとラ・レーヌ・ヴィクトリアが壁面いっぱいに仕立てており圧巻です。

玄関正面はダマスクのイスパファンです。私が初めてオールドローズを購入した時の1本で、当時オールドローズの名前も分からなかったので、現在でもイランの地名にあるイスパファンを選択し、いかにも薔薇の原産地らしいそのエキゾチックな雰囲気を味わった記憶があります。

車庫の壁面に続いて家屋の壁面にペッシュ・ボンボンやハイブリッド・ムスクのプロスペリティ、そしてアイスバーグ・クライマーを豪快に誘引しています。これらの淡いカラーのクライマーが、青系のクレマチスと良く調和します。広大な壁面をカラーを抑えたクライマーを仕立てることにより、株立ちの多彩なカラーの薔薇の背景として落ち着いた雰囲気を作っています。

玄関への通路を行かず右に折れるとガゼボを兼ねたサークルに出会います。導線はゆったりとしたカーブを描きながら庭の奥まで誘導するメイン通路と、庭の敷地の際近くカーブで巡る補助通路が、大胆にも中央のアーチで交差しそのままメイン通路と反対側に進みますが、この導線は極めてユニークであり、途中の薔薇を味合わないと中々奥までたどり着けない気分になり、この結果庭にはかり知れないほどの奥行きを与えています。

日本の茶庭の思想は、街中にありながらも茶室は深山の中に存在するという概念で成り立っています。茶室へは深山の山道の岩の路を一歩一歩踏み締めながら、ようやく清水の流れを概念化したつくばいに辿り着き、冷たい水に喉をひたして、鄙びた小さな茶室にたどり着きます。そこに至る庭石の一歩が1里をイメージし石を配しますが、Sさんの庭も、一歩一歩見るべき風景が変わり、中々奥までたどり着けません。この導線のレイアウトが庭の奥行きの深さの全てを決定しているような気がします。

ローズポンパドールの華やかなアーチまでようやくたどり着きました。

ここに至るまで足元には何本もの魅力的な薔薇がありましたが、光線が映り込みハレーションを起こしたので多彩な薔薇たちは掲出しませんでした。

深いブルーのクレマチスが庭の格調を高めています。

薔薇の間から顔を出すジキタリスも効果的です。

最後のアーチを抜けると奥のくつろぎスペース件作業スペースに辿り着きます。マニントン・モーブ・ランブラーのやさしいカラーが迎えてくれます。

奥の作業スペースです。ガートルド・ジエキルが香りを放ちます。

Sさんの庭は、薔薇だけでなく作業スペースや収納、水詮、作業用具が全てバランス良く備えていることです。本来用土や堆肥など庭の片隅に積んでいてもおかしくないようなものでも、収納庫に収容しているのでしょう。また養生中の薔薇や使い終わった鉢など我が家では庭の片隅に大量に置いてありますが、Sさんの庭で全て収納しているか、廃棄してしているか分かりませんが、庭には見苦しいものが見当たりません。

昔見せる収納という言葉をよく使いました。まさにこの画像の光景が見せる収納です。道具を見ると何に力点を置き、その作業方法まで想像できるのです。

画像でほんの一部しか掲出できませんが、Sさんの庭の下草の種類や配置も見事なものです。

一個一個名札を装着していることが余人ではマネができません。

2階のベランダの薔薇もすばらしいです。誰もが憧れるその多彩な品種に眼を見張ります。

電動でオーニングを開くと晴れた日には薔薇と一体になった夢の空間に転じます。

先日アジサイが満開になったとお知らせがあり、写真を撮らせて頂きました。遅れている薔薇庭訪問記をアップしたら改めてアジサイ編をアップさせていただきます。