25薔薇友訪問記10、井上さんの庭
家内共々、最初は犬の交流から始まった井上さんとは長いお付き合いです。
今は少ないですが、当時我が家の近くでは見沼田んぼで散歩に困らないため大型犬がたくさんいて、それぞれ犬の名を屋号にして交流していました。
犬が喜ぶため休日は家内と通常のコースを離れて、花を美しく咲かせている家を見て回ることが習慣でした。
私は当時ガーデニングを始めた時で、犬を連れていれば不審者に思われず花の美しいお宅を見て回れることが犬を飼い始めた最大の理由だったのです。
こうして半径1kmで花と犬好きなお宅とはほとんど知り合いになりました。こうした中で大きなゴールデンを飼っていた井上さんと小型犬を飼っていた佐藤さんとは、薔薇友になりました。
井上さん宅でイングリッシュローズのグレハム・トーマスが背丈以上も伸びている姿とマサコ・イグランティーヌの美しさに眼を惹かれ、佐藤さん宅では2階のベランダを目指して登っているピエール・ドゥ・ロンサールと大株のアイスバーグに眼を惹かれたました。これらのシュラブローズの存在を知っていましたが実際に住宅の庭で咲いている姿は初めて眼にしました。そして直ぐに英国を訪れる機会が生じ、チェルシーフラワーショーや、個人の住宅でヒマラヤン・ムスクを出会ったことが、シュラブローズに向かう要因になりました。
井上さんは埼玉ばら会に所属していたため家内を通じて話を聞いたり、私はまた井上さんを通じて当時の会長さんとは懇意になりました。
井上さんはその後3頭になったゴールデンと薔薇のために現在地に引っ越しましたが、限られたスペースで最初から薔薇と犬と趣味のキルトづくりのために設計した家ですから実に見事で、人は趣味のために住まいまで変えてしまう例を見てしまいます。
人の縁とは不思議なものです。私は1年に1度だけ井上さん宅を訪問するだけですが、古い戦友の家を訪れたという想いと、私の薔薇好きになる原点の1つがここにあるのだといつも想います。

井上さん宅の1階はカーポートと今はいない大型犬の居住スペースのため、玄関と薔薇庭は2階にあります。

歳を取ると薔薇の名前を忘れたり、或いは聞いてもなかなか覚えられません。ピンクのクライマーはパレード?左の黄色はティ-シング・ジョージア、ロココやレイニー・ブルーが顔を覗かせています。

玄関へのアプローチも1つ1つ薔薇を確認しながら辿ります。

2階の庭は人工地盤とウッドデッキで成り立っています。アーチからデッキを覗く光景が、井上さんの庭の最大のフォーカルポイントと想っています。

ウッドデッキ上の薔薇たちです。井上さんの庭に来ると、今は枯れてしまった懐かしい薔薇に対面できます。井上さんも代替わりをしていると想いますが。
井上さんは私に比べると一回り小型の鉢を使用していますは以前のように頻繁に植え替えはしていないそうです。

井上さんの庭は空間演出のためにアーチを多用しています。画像で振り返るとどのアーチだったかな?と想うことが多く、アーチの存在は限られた空間に変化を強いているため、
それだけ庭に深みを与えています。
畑のような平面の薔薇庭では、薔薇の持つ性能をめい一杯活用していません。

井上さん得意の密集テクニックです。薔薇が美しくまとまる光景を見せるのは異なる薔薇を密集させ薔薇の美しさを最大限発揮させます。
薔薇単独ではただ美しいねで終わりますが、空間いっぱいに密集させると美しさは倍加しますが、これを実現するにはセオリー通り株間を開けての栽培では不可能です。
地植え鉢植えアーチ植えなどあらゆるテクニックを使用して、多くの個性の異なる薔薇を密集させることで、単なる薔薇畑から高度な薔薇庭へ変換できるのです。

ズームを使わず何気なく眼に入った1コマを撮影しただけですが、薔薇の持つさりげない美しさがにじみ出てきます。多分演出して作った光景でないことは分かりますが、薔薇はあらかじめ計算しなくても、薔薇自らの意思で美しく見せようという能力があるのではないかと思わせてくれます。

井上さんの庭の圧巻はリビングから眺める庭の光景です。
自然の風景が好きな人は知っていますが、庭は室内から見る光景が極めて美しいです。井上さんのリビングはこれを計算して設計されています。

趣味の手仕事の合間、眼を休めるために屋外の緑や空を眺めたいと思う人は多いです。私もブログをしたためながら2階の窓から時々空や雲を眺め眼を休めます。
井上さんの趣味のキルトの仕事場の大型のテーブルの前には、美しい薔薇の姿が見えるのです。

退出する時階段を下りながら頭上を振り返ります。以前はもっとたくさんの種類の薔薇が見下ろしていました。もう30年も前の光景でしたが、井上さんも歳を取ったのかなと想いました。

下から階上の薔薇たちを眺めます。皆元気そうで何よりです。

この時期各地でフジの花も人気を集めています。江戸時代まで枝を伸ばし空間を覆う花は夏のノウゼンカズラや春のフジしかありませんでした。
お菓子も当時は和菓子しかなく、砂糖やクリームをふんだんに使った洋菓子はありませんでしたし、お茶も緑茶で紅茶やコーヒーは現代のものです。
階上の薔薇をながめていると、薔薇は洋菓子に当たるものかなと思いますし、食もそうですが改めて日本人の美や食に対する貪欲さを想います。