25薔薇友訪問記17、北本オープンガーデン松崎さんの庭

オープンガーデンのパンフでの松崎さんの庭のタイトルは「バラの花咲くかくれ家」です。
このタイトルは松崎さんの庭のイメージにぴったりで、門の外からも薔薇に覆われた庭を辿っても家は見られず、「かくれ家」の実態は薔薇に隠れた堂々たる「洋館」です。
「かくれ家」は緑と花に囲まれた長いアプローチを辿って、ようやく玄関に辿り着きますが、そこにいても洋館は視点が近すぎてそのの全貌を伺うことはでず「かくれ家」のままです。薔薇に囲まれた「かくれ家」は「眠り姫」の物語を彷彿するイメージを感じます。


私はオープンガーデンの庭を訪問すると、直ぐに陰に隠れた作業を想ってしまいます。
松崎さんがオープンガーデンの前日には日没後ヘッドランプを点灯して作業をおこなったというお話を昨年お聞きして、この話を野田オープンガーデンの方たちにお話したら皆さん共感していました。

この訪問記では以下撮影した画像を何枚か掲載していますが、それぞれの画像のシーンの密度は濃く、私の庭の規模からすると私の家の作業は画像3~4枚程度ですが、松崎さんはその数倍の作業を行っており、ただただ驚くばかりです。

オープンガーデンは個人のガーデニングの楽しみと花の美しさを地域の人に分けましょうという趣旨で行われていますが、松崎さんや浪井さんの庭を見ると、個人の楽しみのレベルは遥かに越えて、花による社会活動の域に達しているような気がしてきます。

訪問した日は、雨の中傘を差しての拝観となりました。雨のため見学の人たちは未だ来ておらず、初めて混雑していない庭を見ることが出来ました。

松崎さんのゲートのアンジェラを撮影するのは初めてです。毎年ゲート周りには見学者が大勢いるため、顔が映ってしまい撮影ができませんでした。

解放された門を入ると、立山の春の風物詩、弥陀ヶ原の雪の壁の大谷ウォークを彷彿させる巨大な薔薇の壁が立ちはだかります。例年見学者たちは左右に林立する巨大な薔薇の壁の迫力と美しさにたじろぎ、なかなか奥に進みません。今年はランブラーローズの開花が少し遅いようです。

薔薇の大谷ウォークの延長で、初夏の雨を含んだしっとりと輝く美しい緑と、真っ白なオルレアの長いアプローチが迎えてくれます。
不思議にこのアプローチは足早に歩くことなく、茶庭の庵に向かう小道に似ています。茶庭の飛び石の1個は1里の山道の距離を表します。

長い緑の回廊を奥の風景の期待を秘めてゆっくりと辿ります。やがてアプローチはオルレアによってやや狭まれ、奥に緑の壁が行く手を遮ります。見上げると樹々の間に洋館のレンガの壁がちらつきます。

突き当たると、路はここで左に90度、右に90度のクランクに出会います。行く手前方に洋館の玄関が顔を覗かせてきますが、その手前にシャクナゲの大株が眼に入ります。

この石楠花の大株を見るとこの少しあとの奥秩父十文字峠の風景や、残雪をバックにした谷川岳の急峻な尾根筋の途中を想い出します。
突如、都市の庭でなく山岳の大自然に遭遇したような気になります。多分この気分は都市での深山渓谷の中の庵を模した茶庭と同じイメージなのでしょう。

洋館の玄関です。迫力があります。

松崎さんは花のアレンジが得意です。花色が素敵です。

ここから本格的なボーダー花壇が現れます。樹々の仕立てや剪定も松崎さんが業者を使わず全てご自分で行っています。

これらの薔薇も全て松崎さんが脚立に乗って作業を行っています。

90度曲がって庭は未だ続きます。普通はこの先はバックヤードにしますが、松崎さんの美意識がそれを許しません。
切り花のアレンジも手を抜きません。

このベランダの前はオーナメント中心にガーデンアクセサリーが並べられています。ここは撮影するのを忘れてしまいました。

ランブラーの開花が遅く、玄関手前の巨大なジャスミーナは未だ蕾のままです。松崎さんの庭は行きと帰りの光景が異なるため、深さを感じます。私は突き当りの左に石楠花がある光景が、今回最も印象に残るフォーカルポイントでした。

帰途に入り、緑の美しいボーダー花壇を眼に記憶させます。

このクランクの突き当りにさりげなく置いてある擬宝珠の大株の鉢とライムの葉が印象的でした。
私も歳をとったせいか、緑の美しい庭に心惹かれるようになりました。松崎さんのかくれ家は緑の美しい空間の中にありました。