10月初旬、花と音楽の里、鴻巣市花久(かきゅう)の里に行きました。
花久(かきゅう)の里は、鴻巣市のNPO法人花と文化のふるさと委員会が運営する施設ですが、この地は二代にわたり衆議院議員を務めた故青木正氏、故青木正久氏のご遺族から旧川里町に寄贈された江戸時代以来の屋敷を、合併後の鴻巣市が再生した由緒ある施設で、広大なローズガーデンと共に花の産地鴻巣市の象徴として多くの人たちを惹きつけています。
故青木正久氏は国会議員として環境庁長官を務めた他、音楽議員連盟の事務局長として音楽文化振興法の成立に尽力し、また「日本ばら会」の副会長を務めました。
「花久の里」は薔薇と音楽を愛した青木正久氏の意思を引き継ぎ、花の街鴻巣の田園のど真ん中に建てられた文化の薫り高い施設なのです。
花久の里は花と音楽と食をテーマに花は薔薇と草花と樹木を中心としたローズガーデンと草花の販売、音楽は音響の良い音楽ホールで主にクラシックの弦楽四重奏団による定期的にコンサートが行われ、さらに名物ウドンを中心としたレストランと鴻巣産の農作物を販売するなど多彩な施設なのです。
広大なローズガーデンを維持するためには膨大な人手が必要です。5月に北本オープンガーデンに同行した篠崎さんは、ローズガーデンでボランティアで薔薇の手入れを行っており、また私も館長さんとは顔見知りのため訪れましたが、今回ボランティアグループも18日からバラ祭りの準備を行っており、10月初旬に再び訪れました。

花久の里のアクセスは、車では容易ですが、都市交通で行くとするとJR高崎線鴻巣駅からタクシーで15分です。また鴻巣駅からフラワー号という花久の里行きのバスがあります。
花久の里の入り口は2カ所あり、上の案内看板の右側のバス停のある長屋門側からと、左端の別棟からの入り口の2カ所あり、此処では右側の入り口をご案内します。

花久の里の印象は一口に言うと格調高く重厚な花と音楽の施設という感じです。
この印象は、環境庁長官や音楽議員連盟の事務局長として音楽文化振興法の成立に尽力し「日本ばら会」の副会長を務めた衆議院議員故青木正久氏の江戸時代からの屋敷を再生した施設というだけでなく、薔薇と音楽をこよなく愛した故人の格調高い人格が施設に反映されているのでしょう。それが他のローズガーデンと一線を画しているような印象を与えるのでしょう。
英国の素晴らしい庭園を持つマナーハウスも、その庭園を愛した故人の思想が現代にも息づいているのと同じだと想います。

長屋門の前の重厚な広場から長屋門に入ります。英国もそうですが、ローズガーデンは見事な植栽があってこそのもので、敷地全体をローズガーデンにするのでなく、植栽に包まれた屋敷の庭をローズガーデンにするという、オーソドックスなレイアウトです。

長屋門の入り口です。この花久の里の入場料は多くの公的なローズガーデン同様に無料です。ただ広大なこの庭園を維持するためには膨大な人手が必要です。
特に手間がかかる広いローズガーデンの維持に、薔薇好きなボランティアの人たちが定期的に維持に参加しています。

長屋門から母屋を望みます。

この重厚な空間です。私は旅で城郭の大手門があると必ずこのアングルで撮影します。長屋門は神道や仏教でいえば結界に当たります。内側が聖なる空間、外側が俗なる空間で、
長屋門や大手門はこの聖俗の境をなす空間なのです。
通常住まいの場合は、聖俗分けられませんが、花久の里はこの長屋門を入ったら聖なる花と音楽の空間に変わります。こんな気分になるのも、この屋敷の空間を形成した故青木氏の
聖なるものの希求が、今でも私たちに聖俗を感じさせてくれるのでしょう。

母屋です。ここはNPO法人花久の里運営委員会が、故青木氏の花と音楽の里を維持するために、おおきな努力を払っています。

母屋の入り口左には休憩コーナーや薔薇の育成コーナーがあります。ここは現代社会の忙しさ、慌ただしさから離れて憩う場所です。

母屋に入ると和洋ミックスした素敵な空間が広がります。

こじんまりとした音楽ホールです。空いた空間を音楽ホールにしたのでは無く、最初から音楽ホールとして設計した音響の良いホールです。
ここでは主に弦楽カルテットによるベートーベンの弦楽四重奏曲全曲演奏やヴァイオリンコンサート、津軽三味線コンサートなどが公演されています。
私は未だこの音楽ホールでの演奏を聴いたことは無いですが、ベートーベン後期の弦楽四重奏曲のラズモフスキーを聴いてみたいなと想います。

埼玉県の農村は関東平野の中心で、利根川と荒川の豊富な水によって江戸時代から米と小麦の2毛作を行っていた豊かな農村地帯でした。
特に広大な平野の中心となった埼玉県北部の農村地帯は、どの農家も自作の小麦によるうどん作りが盛んで、その伝統がおいしいうどんづくりとして残り、熊谷、行田はうどん店が多いです。鴻巣も関東平野の中心として、おいしいうどんづくりが残り、その伝統を受けて花久の里では、香音里うどんとして埼玉県産小麦粉あやひかりを使用しうどん名人が打ち立てたおいしいうどんの店があります。
ローズガーデンの散策は、見るべきものが多く普段よりお腹が空くものです。私の経験ではローズガーデンには消化の良いうどんが合っているような気がします。

館内のエントランスから望んだ花音里うどんの店と茶室です。

10月初旬のローズガーデンの入り口風景です。薔薇は蕾が作られ18日からのバラまつりを待っています。

梅雨時、盛夏、初秋とアジアモンスーン地帯の我が国の高温多湿の気候では、我が国の国土は雑草が蔓延し雑草大国になります。
私は、自分の狭い庭で雑草取りや薔薇の剪定で絶えず格闘し始めてから30数年経ち、この期間登山も忙しいので、雑草や樹々が眠る冬の間は、普段読めないまとまった書物を読むことにしていました。
高温多湿の季節、個人の庭やローズガーデンを観ると、背後に隠れている作業はとても他人事とは思えません。
昔、ガーデニングを始めた頃、高原の風にそよぐ草花のイメージを手に入れようと、種子で撒いたホワイトレース・フラワーが1,5mを越える高さになりましたが、それまで草花など眺める習慣が無かった私が、ドイツの地方都市の郊外の林の中に、雑草として高さ40㎝位で一面咲いているのを観て、同じ品種の草花が国によって成長の度合いが大きく異なるを知り驚きました。私が苦労して育種したホワイト・レースフラワーはドイツでは一年草の種子がこぼれて翌年も咲く雑草の1種でした。

秋の柔らかな日差し(未だ日照は強いですが)を浴びた薔薇たちを眺めると、今年も良く過酷な季節を堪えて来たなとねぎらいの言葉をかけてしまいます。

人間と同じように過酷な夏の間に少しずつダメージを受けているのでしょう。自然界の害虫はこういう時期に弱った薔薇を見つけて攻撃を仕掛けます。
熊の危害のニュースが連日、報道されています。データーでは熊の行動範囲が人間の居住空間に移動しているように想えます。
薔薇も個人の経験では、30年前に比べて、ゴマダラカマキリやコガネムシの幼虫の食害が圧倒的に多くなったような気がします。もちろん私は有機栽培を行っていて土壌に害虫が住みやすくなったせいもありますが、昔はコガネムシの幼虫の食害はコガネムシに脱皮する初夏の短期間の食害の被害さえ阻止すれば良かったのですが、今は温暖化の影響でしょうか、冬でも地面の中に幼虫が死なずに行動しているように見えます。国内の気温の高低に対して渡り鳥を行わないカルガモのような鳥のような、害虫が増えているのでしょうか。

花久の里の基本は樹木の植栽です。華やかなローズガーデンに眼が行きがちですが、家庭で使える植栽も豊富です。

花久の里のシンボルの英国風の本格的な造りの豪快なローズアベニューです。これは個人の庭では実現できません。

歳を重ねると緑の美しさに眼が奪われるようになります。高原や山岳地帯の森林の緑も素晴らしいけれど、こうやって人の手で植栽された自然界の再現にも惹かれます。
かってくねった松の美しさに象徴される城郭や大名庭園が全国に広がったように、現代では、我が国の高温多湿の気候風土にあった現代日本の植栽がどうあるべきか模索がようやく始まったような気がします。
ユーラシア大陸西部原産で、高温は耐えるけれど多湿は苦手の薔薇は、高温多湿の我が国では最も定着しずらい植物ですが、美しさに貪欲な我が国の人々によって戦後栽培されて、全国の薔薇園では春、秋2回の薔薇まつりが開かれているほど愛好されていますが、まだ土着化の過程にあります。多くの薔薇園や個人の薔薇愛好家が一生懸命土着化に努力していますが、気候の方が四季が無く夏と冬しか無くなりつつありますが、私たちは身の回りから緑を愛好してできるだけ温暖化を遅らせることができれば良いなと想います。

さまざまな植栽にも挑戦しています。

パンパスグラスでしょうか?日本離れした光景です。

もい1か所のローズガーデンの入り口サインです。

ここはうどん初め鴻巣の農産物の常設特売場です。春、秋の花のシーズンには、埼玉の草花の一大産地の鴻巣産の草花が並びます。