山と自然のエッセイ、秋の味覚干し柿
秋がやってくると、何といっても嬉しいのは柿がたくさん食べれることです。
子供の頃柿はあまり好きではありませんでした。その理由は現在流通している富有柿に比べて、庭の柿の木は実が小さくて、種を出すとほとんど果肉がなかったためでした。それでも祖母が健在の時は祖母が丹念に皮を剥いて、私たち子供に食べさせてくれましたが、祖母が亡くなると誰も食べなくなり、私だけが木に登って時折食べるだけで後はカラスの餌になりました。
しかし毎年秋になると、祖母は家に無かった渋柿を大量に配達して貰って干し柿を作りました。2階の秋の日だまりの暖かい部屋で、私が1階から渋柿を少しずつ運び、祖母は丁寧に皮むきをして、終わると私がタコ糸をへたに結んで、窓の外の竹竿に吊るして干し柿づくりを行いました。姉や妹は干し柿にあまり関心を示さなかったので、おいしい干し柿はほぼ私の独り占めでした。
山梨塩山の柿農家の柿簾(すだれ)

想い出すと早いもので、16年前はあっという間に経ってしまいます。この時山の会同期の小田兄と故杉村兄の3人で1泊泊まりで大菩薩峠に行きました。その日は登山口の宿泊まりで信玄の遺跡を訪ねる予定で、まずは塩山駅からタクシーで乾徳山恵林寺に行きましたが、見事な柿簾の農家が何軒もあり、帰りに寄ることにしました。

1軒の柿農家で干し柿つくりを見学させていただきました。柿はこの辺りの名産の巨大な甲州百目柿で、作られた干し柿は高級品のため家の近くのスーパーではお目にかからない代物でした。私はかねてから今わの際には柿を食べようと想っていて、その事を柿づくりに忙しいお婆さんに言ったら、お爺さんもそうだったと言って、大きな柿を1個頂いてしまいました。
私にとって干し柿は、子供の頃の秋の味覚の代表として記憶が強く残っているため、特に干し柿には関心があり、近所の家内の友人の故郷が市田柿の干し柿の産地伊奈の飯田の柿農家ため毎年頼んで手に入れていましたが近年歳を取ったため廃業してしまい、手に入らなくなっています。
武田氏ゆかりの寺院を巡る。信玄の墓がある乾徳山恵林寺

恵林寺は臨済宗妙心寺派の夢窓疎石が開山した寺院で疎石の庭と、信玄が信仰した不動明王像、そして信玄の墓がある甲斐一の名刹ですが、信玄にまねかれて快川国師が住職を務め信玄死後秀頼の師となりました。恵林寺が織田勢に攻められ焼き討ちにあった際、快川国師は住職らとこの門の階上に籠り「心頭滅却すれば、火も自ら涼し」と有名な言葉を残し果てました。壮絶な禅師の生涯です。
「御旗、楯無、御照覧あれ!」と信玄以下24将が戦勝祈願した裂石山雲峰寺

大菩薩峠の登山口の山上にある臨済宗妙心寺派の裂石山雲峰寺です。夕方だったのですがご住職に頼んで宝物館の御旗や諏訪神号旗を見せて頂きました。さまざまな信玄もののドラマに出てくる信玄と武田24将の出陣式はこの寺院で行われたそうです。
「御旗」は後冷泉天皇から武田家のルーツ新羅三郎義光に下賜された最古の日の丸の旗で「楯無の鎧」は清和源氏に伝来した8領の鎧の一つです。御旗、楯無しのご先祖に対して卑怯な真似をせず家門の名誉を守る戦いを行うからとくとご覧あれという誓いは、武蔵と相模武士の基本モラルであった「命を惜しむな名を押しめ!」という何よりも名誉を貴ぶ思想で、後に武士道の原点になりました。
武蔵と相模武士を結集した鎌倉幕府はこの思想が根底にあり、我が国初めての封建制度が始まったのです。甲斐源氏武田家は鎌倉幕府設立にかかわったので、その根底には武蔵相模武士のモラルが流れていたのです。

大菩薩峠です。60代最後の時で、まだ皆若かったです。

霊峰富士です。外国人が美しい富士山に熱狂する意味が解ります。
武田家終焉の地天目山栖雲寺

武田勝頼は織田勢に追われて最後の43名になり、最後の拠点とすべく天目山栖雲寺に向かいましたが、入山を拒否されため自害の時間を稼ごうと家臣の土屋昌恒は狭い崖路で片手で蔓をつかみ片手で刀を払い壮絶な戦いを行いました。こうして勝頼は静かな自害の時間を稼ぎましたが、昌恒の勇猛ぶりは千人切りと呼ばれ、日川を血で染めました。
我が家の干し柿つくり

先日美ヶ原の帰途上田近郊の良く行く道の駅で、渋柿を見つけました。1袋300円と格安でしたので購入しました。実は昨年干し柿に虫が湧き、上手に作れなかったため、近くの農協の売店で渋柿が売っていましたが、今年は止めるつもりでいました。しかし思わずこんなリーズナブルな値段で売られているのを見て買わなければ損と購入しました。
しかしこの柿は全量へたの枝が、取入れの際見事に切られていて、干し柿づくりの素人が採集したのでしょう。安価な理由がわかりました。それでもへたの周りにタコ糸を巡らし何とか吊るせる状態にしました。

その後近くの農協に寄ったら山梨産の柿が入荷していました。それほど大きくはありませんが、6個で500円だったら買い得かなと想いました。松本に行った時行きの高速道路の売店では、多分10個で2000円でした。

こうして干し始めましたが、今年は虫が湧かないので順調です。

ブラックフライデーの日、眼鏡屋でレンズを好感しそれを引き取りに行った時、食品売り場で巨大な栃木産蜂谷柿が1000円で売られていました。昨年も購入しましたがそんなに安くはありませんでした。多分ブラックフライデーだったからでしょうか。
蜂谷柿は百目柿と同じように巨大で、タコ糸もダブルで結びました。

今年は順調です。息子は年末に帰省してくるしお正月には娘夫婦も来るので、そのときに蜂谷柿をふるまおうと想っていますが、私以外皆飲兵衛平なので、多分そんなに喜ばないでしょう。
