薔薇のエッセイ1,冬剪定後の薔薇

1月は予想通り連日寒い日が続きました。寒い季節は、どうしても庭の手入れが億劫になるため、薔薇の剪定や植え替え、施肥、害虫対策は、1月に比べると暖かい12月中に大半を行いました。

以前に比べて体力や気力に衰えを感じていますが、冬の薔薇のメンテナンスは脚立作業が中心となり、短期で終わる作業ではなくなりました。退院後無理はしないと決めているため、作業は暖かい午前中のみとし、用事の無い日を選んで延べ約12日以上かけて薔薇や他の植物の剪定と害虫対策、植え替え、施肥などを済ませました。その際時間を要する雑草抜きは全て、1月に回しましたが寒い日が続いたため全ての作業は完了せず、家の横と裏側の通路の雑草取りは残したままです。

私は体重が重いため雑草取りなど中腰での作業が苦しいです。そのためフロイスを代用したガーデニングチェアに座り、移動しながら行うため能率が悪く時間を要してしまいました。鉢植えの薔薇の雑草取りも時間がかかります。雑草取りは根から抜かないと効果がないため、小型のネジリ鎌と隙間草取りの両方使用しますが、これが中々時間を要するのです。

地植えの薔薇は雑草を抜き終わっていないと広範囲にマルチングを施せません。上の画像は2~3日前のもので、完全に雑草を取り除きマルチングも終わった状態で、やるべきことを済ませた満足感を感じる画像です。

薔薇の剪定・誘因はクリエイティブな作業なのです。

クライマーやランブラー仕立ての薔薇から剪定。誘引作業を始めました。広い庭だったらともかく、狭い庭で脚立を振り回すのは容易ではありません。脚立が立つ地面が固く平らであれば良いのですが、土や平板の地面は平らでなく脚立の足の下に木を敷いて安定させる作業が面倒です。脚立は状況に応じて3脚脚立の他2,3種類の脚立を使用するため更に作業効率を悪化させるのです。

しかし、季節になると薔薇は工夫し誘引した通りに花が咲きます。庭木の剪定は乱れた枝を整える床屋さんのようなものですが、それとは異なり薔薇の剪定と誘引は、花の季節にいかに自分が望む通りの風景を作れるか、その美しいイメージを想像しながら作業を行うため、単なる作業でなくクリエイテイブな作業なのです。
それが薔薇の剪定と誘引の最大ポイントです。

12月中旬に最初に剪定・誘因を行ったルイーズ・オディは、枝にもう芽が出始めています。

薔薇の季節になると、冬の殺風景な風景が一変します。薔薇はこの季節の前3月下旬に一斉芽吹きがあります。その芽吹きの様子は剪定・誘因結果の通信簿と同じで、それを見ると花の季節の状況が予測され、そうして本番を迎えます。この一連の作業を工夫しながら行った結果、薔薇の季節の一斉開花を一度体験すると、薔薇栽培は止められなくなるのです

薔薇は基本的には新陳代謝を行う植物です。古い枝を切り新しい枝を出させる。衰えた薔薇の代わりに新しい勢いのある薔薇と交換する、それを全て栽培者に負わせる残酷な植物なのです。
薔薇は草と違って樹木ですが、他の庭木のように人間の命より長いものではありません。原種に近い品種は長寿ですが、繰り返す花を咲かせる近代の薔薇の寿命は長くなく、鉢植えでは平均10年足らずです。地植えの場合はそれより2~3割長くなります。害虫にやられて3~4年で枯れる薔薇もあるし、20年以上続く薔薇もあり平均の中身はかなりバラツキがあり想像するほど長寿ではありません。

この事実は薔薇栽培を行うまで知りませんでした。花を繰り返す薔薇は大型犬と同じく、3年目あたりから充実し、5年目でピークを迎え、やがて円熟しゆっくりと衰えて大体10年でその生涯を終えるのです。宿根草は薔薇ほど存在感もなく手入れも必要としませんが、薔薇は施肥、剪定、害虫処理と手がかかり、何よりもその結果美しい花を見せてくれるため、その存在感は抜群のため、失った時の喪失感は特に強いのです。20数年間、薔薇は私の眼の前で生老病死を繰り返していました。

美しい薔薇庭を維持しようと想ったら、庭を絶えず5年目のピークの薔薇でそろえる必要があります。それを何十年も最上の段階で維持していくためには、日常の管理だけでなく、樹勢が衰えて来た薔薇の代わりに、毎年絶えず新しい薔薇を補給して行かなければなりません。また害虫の食害で枯れる薔薇もあり、放置して補充しないと直ぐ庭は寂しくなります。

薔薇の寿命を短くする要因は、住宅街の個人の庭の環境が、薔薇園に比べると薔薇が好む風通しや日照の条件で比較にならないくらい不利な条件が揃っていることです。反面、日照や風通しが良い畑みたいな場所では、薔薇の栽培はうそみたいに容易になるのです。

悪条件に満ちた住宅街の中の個人宅で、何年も美しい薔薇庭を維持している薔薇友達の庭を見ると、尊敬の念が湧いてきます。

新しく薔薇を購入する主要な動機は、未知の品種を見て見たい、栽培してみたいという欲求です。
原種から始まって薔薇の歴史を辿ると、その時代時代のニーズに合わせて品種改良を行って来ました。薔薇は19世紀の中盤から劇的に変化を遂げました。それまでは薔薇の香料を採集するための効率から主に一重から八重咲きへの改良が行われ、その後人々が公園で薔薇を楽しむために一季咲きから四季咲きに改良した品種を作ってきました。また樹形も、原種から豪快なクライマーやランブラーローズを作り出し、更には耐寒性の品種やコンパクトな薔薇も作り出してきました。これら歴史を刻んだ数々のオールドローズの中でも、消えずに残って歴史に耐えた優秀な薔薇がキラ星のごとく存在しています。

私が薔薇を始めて直ぐ、英国の著作でこれらのオールドローズの体系を知り、それらのグループの代表的な薔薇を自分の手元で育てたい衝動に駆られました。当時薔薇の世界はハイブリットィのモダンローズの全盛時でしたが、オールドローズの血を濃厚に引く美しいイングリッシュローズなどのシュラブローズにもはまり、これらの薔薇を次々と購入し我が家の狭い庭に植えて行きました。
ランブラーやオールドローズの中には今まで日本で栽培されていなかった品種も多く含まれ、その栽培方法も未知のため手探りで行いました。また購入した薔薇のほとんどすべてがシュラブ系で枝が細く狭い空間では自立しにくい薔薇のため、仕立て用具は日本に無く、DIYで工夫したりオベリスクやアーチを英国から手に入れました。



こうして薔薇の全貌と美しさを感じたくて無我夢中で薔薇庭を作り始めて20数年が経ちましたが、その間毎年画像で記録しています。このブログの表紙の画像は2002年に撮影したものですが、この当時の光景に比べると現在の庭はかなり物足りません。

我が家の庭が、20年前に比べて美しさや迫力が劣る原因を考えてきましたが、新陳代謝を積極的に行ってこなかったことに原因がありました。
薔薇を始めて7~8年までは、オールドローズで経験していないグループや、新しく登場したブランドの薔薇など未知の薔薇を栽培しようという意欲が旺盛で、それらを購入ししてきましたが、10年ほど経つと大体未知の薔薇は把握できて、未知の薔薇を購入しようとする意欲が減少して来たのです。そうなると積極的な薔薇庭づくりの勢いは薄れて行きました。また登山では、クラブのOB会の役員となり山行が忙しくなったことも要因として挙げられます。

薔薇庭は一度手を抜いてしまうと、その再構築にはかなり時間がかかります。また再構築を妨げる大きな原因は、毎年発売される新品種を栽培しようとする意欲が湧いて来ない点にあります。特に現在の薔薇の世界はあらゆるブランドがシュラブローズに傾斜していることと、同じよう花形の僅かな違いのカラーの相違の薔薇では、未知の魅力が感ぜず食指が動かないことも原因します。このことは一般論でなく私個人の思考です。

ただ新品種を購入しないからって、薔薇が飽きたわけではありません。昨年退院してから私を待っていた冬の薔薇剪定など、一連の作業を毎日2時間ずつ行うことによって、それが何よりのリハビリに繋がりました。私の驚異的な回復もガーデニングの結果だとリハビリ病院の若いスタッフたちは言っていました。
このように冬の剪定など待ったなしのガーデニングが、足腰の回復を促進したことに、改めてガーデニングの効用を噛みしめました。更にその結果は美しい薔薇の見返りも用意されているのです。

冬は薔薇の元肥の季節です。薔薇だけでなくアジサイやクリスマスローズ、そして宿根草も共通して元肥が必要となります。元肥は薔薇の木そのものをすこやかに育てるための必需作業です。元肥は4種施します。まず土壌にミネラルを補給するためにミリオンを土にすき込みます。さらに土壌の団粒を維持するため、微生物EM菌入りの有機肥料を施し、上に樹木のバーク系の堆肥をマルチングし、最後にIB肥料を上げます。ここに至った経緯はまたの機会に触れたいと想います。

コガネムシ幼虫対策として土を少し掘り上げてダイアジノンをすき込みます。ゴマダラカマキリの幼虫退治は最後にトラサイドAをジョウロで水で薄めて株元にかけます。

ダイアジノンとトラサイドAの使用によって、2年前10本枯らしましたが、コガネムシの被害は無く、ゴマダラカマキリの幼虫の食害は、昨年3本の薔薇に木くずを発見しトラサイドAを株元にかけて事なきを得ませんでした。

学校の薔薇の冬剪定作業

学校に10年前の開港直後からボランティアで薔薇を植え始めています。
我が家の薔薇の冬剪定を終えた直後、作業を行いました。作業は用務員の星さんが一緒に行うので、スピードが速いです。
スパニッシュ・ビューテイです。この薔薇は他に先駆けて咲きます。一季咲きですが、スペイン美人の名の通り、大輪の大らかな花をびっしりと咲かせます。
クライミングローズとして世界的に五指に入る優秀な薔薇だと想います。

薔薇は学校の裏側と表門の2カ所にあります。最初はこの裏口の薔薇だけでした。裏口のゲートのアーチは私が設計したものです。
こちらはアイスバーグ・クライマーを誘引しています。ドイツのコルデスが作出した優秀なフロリバンダのクライミング種です。本来は一季咲きですが、繰り返し冬になるまで咲き続ける優秀な品種です。

このフェンス沿いには幅が狭い土の部分があります。この狭いスペースを星さんが深さ70㎝堀ったお陰で、つつがなく薔薇は育っています。イングリッシュローズのフォール・スタッフやハイブリッド・ムスク、フェアリーなど四季咲きで強靭な薔薇を植えています。駐車場の排気ガスにめげず育っています。

ここも風通しが良いので、薔薇は病気にもかからず元気です。おかげさまでここに植えた薔薇も全く心配はなく、春には美しいローズアベニューが現れるでしょう。

学校の薔薇は、虫害も見当たらず全て順調で、今春も素晴らしい花を咲かせてくれるでしょう。

ここは冬になると北風の通り路になるため、もっと薔薇が伸びるだろうと想っていたら予想に反して中々アーチを覆うまでに行きません。左はピエール・ドゥ・ロンサールで我が国で一番人気のクライミングローズです。右はイングリッシュローズの歴史的品種グレハム・トーマスです。あまり伸びないので2年前に風よけに強靭なシュラブローズのモ-ツアルトを植えました。