薔薇のエッセイ9、薔薇の鉢植え方法



日々の暮らしの中で、旅や雨の日や真冬を除いては、ほぼ毎日水やりを含めて薔薇と接しており、毎日接していても薔薇には小さな発見があるのです。
また30年以上薔薇と接した日々の中で、薔薇に関して自分なりに感じた事や、苦労した事、庭づくりの工夫、土壌や有機栽培、害虫対応等、自分なりに工夫して取得した事、等や、また趣味の世界ですから自分の好む薔薇など数多くの事に気が付きました。

従って日々行っている薔薇の栽培作業の紹介や、土壌や有機栽培など、その都度気ままな薔薇のエッセイとして、ブログ化することを考えました。この方が薔薇講座などと改まって偉そうに語ることも無いし、気が向いた時に書けるような気がします。


私は日頃、住宅街の中の小さな庭で薔薇栽培で苦労していますが、広大な薔薇農場や薔薇園に比べると住宅街の中の庭は、風通し、陽当たりなど薔薇栽培上の大きなハンディがあります。一日中陽が当たり、大株になるようにゆったりと間隔を空けて植えている薔薇園の薔薇は花が多く、しかも付近に無数に薔薇があるため、害虫が食害してもその量は僅かであり、花柄積みさえ行っていれば、害虫によって引き起こされる外見の変化はまずありません。私は短い期間でしたが薔薇園の経験もあり、いかに一般の家庭で密集させた薔薇栽培がハンディに満ちているか良く判りました。個人の庭ではスペースが限られるため、さまざまな品種を楽しむためには密集せざるを得ないのです。
私の薔薇栽培は、一般論的な薔薇栽培でなく、住宅街の狭い個人の庭での栽培スタンスに立って解説しています。その点では住宅街の庭での薔薇栽培を行っている人に、多少の共感も感じてくれると想います。

また私は癖で、何かテーマについて書くときは、どうしても総合的に考えてしまって、テーマ展開のボリュームが大きくなるきらいがあります。
例えば薔薇の鉢植え方法とした場合、土壌のありかた、肥料のこと、有機栽培の原理、鉢の素材や大きさ、鉢植えと庭植えのメリット・デメリットなどなど、大きく拡がってしまいますが、なるべく広げ過ぎないように、その都度1つのテーマだけに絞って、広げ過ぎずにシングルイシューのスタンスでの展開に努めたいと想います。

クライミングローズ、コルデス・イルミナーレ

薔薇の樹形の大きさによって、鉢の大きさは異なります。また大苗と新苗でも鉢の大きさは異なります。これについては別な項目で解説を考えているため、ここではクライミングローズ、イルミナーレの鉢植え方法に限って解説します。
またクライミングローズについても、シュラブ系のクライマーやハイブリッド・ティの枝替わりのクライマーは樹形の大きさが異なり、またクライマーではないけれどイングリッシュローズやデルバールの大型の樹形となる薔薇などクライマーと同じ扱いの品種もあります。

鉢のサイズや素材については、長くなるためここでは触れません。クライマーローズは通常市販の最大級(15型、径約45㎝)を使用した方が、植え替え頻度が少なくなります。

私は薔薇栽培用具としてダイソーの小型バケツを多用しています。

広大な薔薇園での作業は、堆肥や肥料や薬品などをカートを使って移動させることができますが、住宅街の中の家庭の庭ではそれも叶わず、栽培作業自体より、用意、移動、かたずけ、収納などの周辺作業に手間がかかります。まして新たに鉢に薔薇を植え込む場合、薔薇の購入、鉢の手配、用土、堆肥の購入、更に欠品した薬品や肥料の購入は一大事です。
私は男性のため多少重いものは持てますが、それでもホームセンターに大袋の用土や堆肥の購入は面倒です。売り場から車までは面倒でも台車は使えますが、自宅に戻って、これら大袋の置き場まで何往復もして運ぶのが面倒です。細かな肥料や薬品は物置に収納出来ますが、一般住宅の場合家屋の屋根の庇の下に野積が普通でしょう。

女性に、クライマーは径45㎝の15号鉢に植えるのだと大鉢を見せたら大抵の人は嫌になってしまいます。まず移動に重くなるし、鉢入れる用土、堆肥の量を考えただけでも尻込みしてしまいます。
クライマーは鉢植えで栽培した場合、多分10年間或いはそれ以上は、植え替え無しになるでしょう。枝が伸びてアーチなどに誘引されていれば、とても植え替えなどしようという気分にはなれません。そうかといって小さい鉢で植えたら、根が詰まって花が咲かなくなり3年待たずして植え替えることになってしまいます。

クライマーを鉢植えする利点は、樹形が大きくならないことです。庭の直植えに比べると大きさは半分ぐらいで済みます。とくにランブラーローズの人気のポールズヒマラヤン・ムスクは鉢植えをお勧めします。

私は薔薇以外さまざまな樹木に手を出してきました。オーストラリアや地中海沿岸などの高温多湿でない地域原産の樹木は、広い庭以外は特に鉢植えが必需です。
ミモザとユーカリ、ニセアカシアは特にそうです。私の経験ではミモザの根は大蛇のような根になり、フェンスブロックを突き破る勢いになります。私はミモザが枯れて根を掘り起こしたら、まるで大蛇のような根で気持ち悪くなりました。我が家のユーカリは機会がありましたら紹介します。その生命力は脅威です。ニセアカシアの並木は近くの県道の歩道を盛り上げて破壊してしまいました。オリーブも要注意です。
ミモザは早春真っ先に黄色い花を咲かせグレーリーフも魅力です。ユーカリは私が勝手に枝詰すると家内は怒るぐらい切り花の脇役葉として優れています。ニセアカシアも美しいライムの葉にはうっとりします。オリーブもベイリーフの実用葉として人気がありますが、直植えだと手に負えなくなるので大型鉢をおすすめします。いずれも住宅街の中の庭を想定した感想ですが、これらの樹々は郊外の広い庭の直植は大型になり、剪定など高所作業の手間が大変ですが魅力的です。

今回使用したテラコッタは、以前は何を植えていたか記憶はありません。実はこの場所にイルミナーレを直植えしようと思い、アジサイとローブリッタを植えた鉢を置いてあった3枚の平板をかたずけて土を掘り始めましたが、浅く土を乗せた下に点検穴の蓋があることを思い出しました。考えて見たら、今は別な場所に地植えしているポールズ・ヒマラヤン・ムスクは、かってこの場所に大型鉢に植えていたことを思い出しました。

使用していない12号鉢はありますが、15号の深型鉢は無いので、15号ですが下の方の容量が少ないテラコッタがあったので、これに植えることにしました。

鉢底網を敷いて割れたテラコッタを鉢底土として下部に入れます。軽石の鉢底石は、植え替えの際土に混ざって始末が悪いので、決して使いません。このため軽石の鉢底石をネットに入れて使用する人もいますが、ネットは2,3年で劣化し鉢の中で敗れてしまいます。
鉢底石は通常赤玉の大粒がベストですが、地植えの底土にはテラコッタのかけらが便利なので、割れたテラコッタは捨てないで砕いて保管しています

土壌は赤玉の小粒6、5:堆肥3.5のブレンドを使用します。プラ鉢の場合は渇きが遅いため7:3でブレンドしますが、ブレンド割合は計測などせず大まかに判断します。
大昔、未だ牛が放牧で自然草で飼育されていた時代には、牛糞は臭いという錯覚で使われていなかった時代、発酵済み牛糞を愛用していましたが、現在、堆肥は牛糞の入っていないものを使っています。近年バーク堆肥が多くなっていますが、中身は牛糞主力のバーク堆肥もあります。バークは木の皮ですが、発酵熟成期間が足りないと悲劇になります。堆肥は使ってみないとわかりません。乾燥状態で手にサラサラして良さそうなバーク堆肥でも、水を吸ったら固まってしまうバーク堆肥は要注意です。ですから初めてのバーク堆肥はマルチングで半年間使って様子を見た方が安心です。

いずれにしても一般的には堆肥の品質は価格に比例するでしょう。小型の鉢には堆肥の代わりに昔ながらの腐葉土を使用しています。有機栽培の項で解説しますが、堆肥は肥料でなく団粒を維持する腐植物です。やはり良く熟成した腐葉土がベストかも知れません。

右はEM菌のぼかし肥料です。スーパービバホームのすぐれものです。
土壌と堆肥など有機栽培については別の項で詳しく解説します。


左は追肥用の三菱化成のIB肥料です。もう10数年愛用している化学肥料ですが、ホームセンターなどで小分けしたものは、高価なため農協から生産者用の大袋を購入しています。

コガネムシ対策のダイアジノンです。近年住友化学でもオルトランDXとしてコガネムシ対応の薬剤も発売されたので、他の植物や薔薇の株元に害虫が多数いる場合は、オルトランDXを使用していますが、それまでは小型のダイアジノンを使用していましたが、容量が少なく高価なためコガネムシの猛威にさらされていました。10年前からDXが発売されていたら、もう少し状況が違っていたでしょう。

私の場合、害虫対策は、キリが無いので空中を飛ぶ害虫は無視し、地面に潜むゴマダラカマキリの幼虫とコガネムシの幼虫対策に力を注いでいます。コガネムシの幼虫対策には最低年4回、株元付近の地中に散布するため、家庭用のダイアジノンではコスト高になるため生産者用の日本化薬のダイアジノンを使用しています。購入はアマゾンかホームセンターの農薬売り場のどちらかです。


こちらは先日スーパービバホームで購入した日本化薬ダイアジノン5%です。紙袋のダイアジノンは野菜用の3%ですが、今度は5%にしました。
右はEM菌入りぼかし費用で、肥料の主体は鶏糞のようです。撒く前は少し匂いはしますが、庭に撒いても匂いは飛んでしまいほぼ無臭になります。
真ん中は住友化学の緩効性化学肥料のばらの肥料です。この肥料は発売以来愛用していますが、植える際根に触れても根を傷めないため、草花を植える際も、ハイポネックスのマグアンプか住友化学のばらの肥料のどちらかを愛用しています。
右はIB肥料で植え終わった最後に使用します。

赤玉土小粒と堆肥は別な容器でブレンドしておきます。移植ゴテでくまなく良くかき混ぜます。
いよいよブレンドした用土を鉢の中に入れます。最初は薔薇苗を育成鉢から出さず、植え込む鉢の中に立ててざっと高さを図り、底の高さまでブレンドした用土を入れ込みます。
私の場合は土中のミネラルを重視するため、補強のためにミリオンをすきこみます。ミネラルについては別途土壌の項での有機栽培について深く解説します。

 



いいよいよ薔薇苗の植え込みです。薔薇苗の株元の継ぎ口が、土壌の表面に出る様にして、しかもどじょうの表面が鉢の口に対して、水を溜められるよう高さを調整して植え込みますが、薔薇苗の底の高さの調整がとても大事です。この高さが植え込む際の最大のポイントです。

薔薇苗の底土の高さが決まったら、いよいよ薔薇苗を育成鉢から取り出します。根が良く回った薔薇苗は抜いても育成鉢から中々抜きにくいですが、その際は育成鉢をたたいたり、最悪は水を少しやって滑りを良くして抜きます。抜けにくい際、薔薇苗を上に引っ張るよりは、手でしっかりと受け止めれば逆さにして受け止める方が根に対するリスクは減少します。

根が底の方まで回っている場合は、手でほぐし先端を切ります。その方が根に刺激を与えて括着を促進します。

育成鉢から取り出した薔薇苗を底土の表面に立てて、薔薇苗の継ぎ口がどの表面に出て、しかも薔薇鉢の縁との間のウオータースペースがとれるかどうか、確認し、薔薇苗の株元の表面が高い場合、底土を掘り低く設定します。この作業は大事なので納得するまで何回も繰り返します。鉢のウオータースペースが無いと、水やりの際、鉢の表面から水と一緒に土が流れてしまいます。株元の継ぎ口が土に隠さないことは、私が薔薇栽培を始めた際、東京農大出身の切り花薔薇栽培者から、継ぎ口は必ず日光に当てる事と聞いてから実践していることです。理由は分かりませんが、多分切り花栽培の経験から述べているのでしょう。その人から1年に1株で何本切り花を生産したらペイするか、1本に対して最低限必要な土の量をうかがいました。

薔薇苗の周りに土を被せながら、ミリオン、ダイアジノン、そして根の近くに、ばらの肥料を施します。ばらの肥料やコーティングされているため根に触れても大丈夫だし、直ぐ溶けて効果を発揮できるよう根の傍に施すのです。EM菌入りぼかし肥料は、安全のため薔薇苗の外側に施肥し、有効微生物の繁殖を図ります。

以上の作業を行いつつウオータースペースが出来る寸前までブレンド用土を入れ込みます。
そして水やりによって肥料成分が根に溶け込むように、株元の表面に再度EM菌入りぼかし肥料を施します。

プラ鉢に比べてテラコッタで乾きやすいため、表面に堆肥でマルチングを施し、仕上げにIB肥料を株元に施肥します。堆肥の上にIB肥料を施肥する理由は、溶け具合が良く見えるからです。これは私の自己満足の判断です。

以上で薔薇苗の鉢植えは終了です。なお薔薇苗の植え込む時期は、一年中OKで、小さな育成鉢で育てるよりは、早く定植して根を開放した方がベターだと想います。
なお薔薇の移殖は、根が休眠している時期に行う説の理由は、私なりに解釈すると植え替えはどうしても根を切ったりするため、根の活動時期に行うことは人間で言えば麻酔無しの外科手術を行うことと同じで、根に負担をかけることだと想います。植え替えでなく苗から定植は一年中OKだと想います。

追伸、植え込んでから気が付いたことは、このテラコッタに以前グレハム・トーマスを植えていたことを思い出しました。大型テラコッタにしてはイタリーのデローマに比べると、深さが足りず土の容量が足りないため、グレハムトーマスはボリュウーム不足だったので、直植えに切り替えその結果、このテラコッタが余ったのです。歳をとると忘れっぽくなります。このイルミナーレは少し伸ばしたいので、春になる前の薔薇が眠っている時に、15号鉢に植え替えようと想っています。2度手間ですが、ここで妥協したらイメージする空間は作れません。

ここまで書いていると、土壌の事、有機栽培の事、ミネラルの事など、私の薔薇教室で話してきたことが次々と浮かんできました。今回薔薇についてのエッセイは第1回ですが、時間があれば2,30回ぐらいは直ぐ続きそうです。