薔薇のエッセイ11、クライマー、ランブラーの冬の剪定・主庭編

薔薇栽培で一番手がかかるのは、クライミングローズやランブラーローズ、オベリスク仕立ての剪定、誘引、施肥の冬の剪定作業です。
冬と言っても2月の立春を過ぎると芽が動き出すため、遅くとも1月中に済ませなければなりません。
しかし冬は、もともと寒い上に太陽も斜めに差すために、隣家の影で庭に全く陽が当たらない場所が増えたり、午前中の日射が短くなったりして作業中もかなり気温が低くなります。
また12月と1月とでは気温が全然異なり、1月の大寒から2月初の立春の間は、12月と比べ物にならないくらい寒いのです。
以前は、12月中に冬の薔薇栽培作業は全て終えて、1月から3月中旬から下旬の薔薇の芽吹きまで、ガーデニング作業は全て中止にして、冬は庭に出ないことを心がけていました。しかしこの冬の季節は晴天が続くためと植物の繁茂が無くなり、デッキやフェンスの塗装などガーデンDIYの適期でもありました。しかしこのガーデンDIYも毎年のことでないため、冬の間は暖かい室内でぬくぬくと過ごしながら、まとまった読書を楽しんで来ました。

身体を壊して退院後、私のガーデニングのスタイルは午前中だけの作業に留めることに変更しました。
しかし午前中だけの作業に変更しても、薔薇を減らしたわけでなく総体の作業量は変わらないため、今まで12月後半に1週間かけていた冬の薔薇の剪定作業は、2週間かけて行うようになりました。
ということでいろいろ用事や外出、旅行など間に挟んで12月、2週間かけて薔薇の剪定作業を行いました。しかしオベリスク仕立ての薔薇の剪定や全品種の寒肥の施肥は年を越してしまい、引き続き暖かい日を選んで行っています。


剪定前(10月末)

10月下旬の風景です。

剪定作業の準備

ボウボウと小枝と葉が絡まって伸びたクライマーやランブラーローズを前にして、心を決めて剪定誘引作業を開始します。
私の剪定作業の装束の必需品は、まずが防塵メダネです。上を向いたり棘の付いた枝をかき分けながら剪定作業を行うために、まず大切なことは眼の保護です。
次に皮手袋です。これはジャングルのようなランブラーローズと格闘するなら厚い皮手袋が必要ですが、厚すぎてはビニタイの結束が出来ないため、我が家程度の薔薇だったら近年はもっぱらブタ革の薄い作業用の手袋を愛用しています。薄ければ手袋をしながら結束作業ができます。たまにはランブラーローズの鋭いトゲが、革を突き抜けて刺すこともありますが、それは例外です。
薔薇のトゲに刺されながらの作業のウエアは、目の積んだフリースがベストと想っています。私は30年前のllビーンの風を通さないフリースを愛用していますが、ユニクロの古いフリースも使い勝手が良いと想います。薔薇の剪定作業ではズボンに地面に落ちたランブラーローズの枝が絡むことがあるためと、冷え防止のためオーバーズボンが必需です。後は帽子は必需であることは言うまでもありません。

私は冬のクライマーやランブラーローズの剪定は、刈込ハサミは使わず、剪定ハサミを使用して直接剪定するため、腰にハサミホルダーとビニタイ入れ袋をぶら下げて行います。ハサミを手から外す作業が多く、脚立に乗って置いたり掴んだり面倒です。

問題は脚立です。クライマーやランブラーは脚立に乗っての高所作業ばかりなので、脚立の選定が重要です。
庭は土の部分が多く、地面が安定した脚立作業は個人の家では不可能です。4つ足の1本が浮いたり、土に脚立の足が入り込み傾いたりして危険に満ちています。
今回、私は移動と設置が面倒でしたが、全品種、足場が安定し、植木屋さんが使用している園芸作業用の三脚脚立を使用しました。


剪定、誘引後

剪定を終えたメインの庭の光景です。オベリスクなど部分的に済んでいない箇所もあります。

昨年の5月の咲き始め

ガゼボに仕立てた、ブルボンローズのザ・レーヌ・ヴィクトリアの開花が早く、ポールズ・ヒマラヤン・ムスクとアルベルティーンはようやく開花が始まりました。

剪定、誘引後 昨年12月末

一応すっきりしました。

昨年5月咲き始め

頂芽優勢の薔薇の基本的性質と剪定の目的

薔薇の基本的性質、頂芽優勢を初め基本を理解し頭に刻む。

頂芽優勢と用語は聞きなれない言葉でしょうが、薔薇の基本性質で、薔薇栽培は、薔薇のこの頂芽優勢の性質を逆手に取って行うことが基本です。
更には薔薇の性質の基本がいくつかあり、基本さえ頭に入れておけば、薔薇を前にしてどう切ったら良いのか、迷うことも少なくなります。

★頂芽優勢の性質とは、薔薇の枝は太陽の光を求めて上に伸びて行き、枝の先端に栄養を集中させる性質があります。逆に放っておくと伸びた枝の先端にしか花を咲かせません。先端の栄養を吸って咲いた花は放置しておくとそのままで、新しい花は咲きません。他の草花もそうですが、特に薔薇は枝を剪定することによって、新しい芽が出て、その芽から新しい枝が伸びて、先端に花を咲かせます。

★古い枝を新しい枝に更新する。
薔薇は世代交代を強烈に即す残酷な生き物です。古い枝には勢いが無くなり新しく枝に多くの花が咲きます。古い枝より新しい枝の方が水分や栄養の吸い上げ力が強いためです。

★二股に分かれた枝など余分な枝はカットする。薔薇は枝の分だけ水分や栄養分を吸い上げるため、二股に分かれた枝など多すぎて余分と想われる枝には、水分や栄養分が行かないように剪定によって枝数をコントロールします。

★枝間を開ける。
風通しの悪い場所では、枝を大事に採して密集させたままにしておくと、風通しが悪くなり病気にかかりやすくなり、繁茂すると日光も遮ってしまうため、枝の間隔を空けます。

★薔薇の剪定の一番の目的は、樹形をコントロールすることです。

クライマーとランブラーが花を咲かせる原理

クライマーやランブラーは主枝と主枝から伸びる横枝で構成されます。主枝とは横に伸ばして誘引する枝で、以前からある古い主枝は茶色、近年の主枝は太いグリーン色で表示しています。横枝(脇枝)主枝から上に伸びた枝で、勢いのある新たな横枝は次の時代の主枝になるのです。

薔薇の頂芽優勢の性質は、主枝に現れた芽から横枝が成長し太陽に向かって伸び始め、初夏に先端に花を咲かせます。仮に6本の主枝1本に20本ずつ横枝が伸びると、合計120輪の花が咲きます。多くは房咲きですから1本に4輪の花が咲くとしたら初夏には合計480輪の花が楽しめる計算となります。ランブラーローズの房は大きいから小花にしても1,000輪以上になるでしょう。

下図は以前薔薇教室を行っていた時の私のオリジナルテキストです。

個々の実例 ベランダの柱間にワイヤーで仕立てたアルベルティーンとヒマラヤン・ムスク

ランブラーローズ・アルベルティ-ンは、フランスのアルベリック・バルビエが作出したランブラーローズの傑作です。彼は代表作である白のランブラー、アルベリック・バルビエとジュランビルの3種のランブラーローズを世に残しています。
我が家のアルベルティーンは25年以上経ちますが、未だ元気で成長力が旺盛です。

ヒマラヤン・ムスクも同じワイヤーに絡めています。

ベランダの柱にワイヤーを張り、誘引しています。もっと伸びるのですが、布団干しの関係で先を止めています。剪定は花後に、新たに伸びた横枝(脇枝)をかなり短く切りますが、梅雨時になると旺盛に伸びるため、梅雨明けに2回目、真夏から9月に伸びるため3回目の剪定を行い、冬に本剪定を行います。枝が伸びすぎると干した布団が引っかかるのです。

枝の結束はせず、ワイヤーから枝を吊るしているだけです。主枝は時々更新し、主枝から伸びる横枝は2㎝程度残してカットします。
今年はアルベルティ-ンの枝が古くなってきたので、1本だけ残しカットしました。

昨年5月の情景

アルベルティ-ンがメインでしたが、ヒマラヤン・ムスクに圧倒されてしまいました。

アルベルティーンの枝はベランダだけでなく、ガゼボと連結し、庭の中央の空間に誘引しています。誘引にはアルミの針金をガゼボのトップまでダブルで引っ張りそこに枝を結束しています。枝はガゼボの頭まで伸びているので、安定しています。このようにクライマーやランブラーは、ワイヤーや針金でサポートすれば、自身の枝で空間を演出できます。ワイヤーは固定物の間をたるみなく張ることができますが、専用の高価なワイヤーカッターが無いとできません。
この枝もベランダに合わせて年4回剪定します。

ガゼボに仕立てたザ・レーヌ・ヴィクトリアの10月末剪定前

ガゼボはいごこちが良いのか良く伸びました。

ガゼボ、剪定・誘引後

ガゼボの剪定と誘引は手間がかかります。三脚脚立の上部に乗り、天井に伸びた枝を、切る枝と残す枝を1本ずつ見極めながらハサミでカットします。
結束はビニタイのカットタイプと巻物の2種類を選択しながら行います。

物置の屋根に仕立てたヒマラヤン・ムスクの剪定前


庭の奥に1,5坪の大型物置があります。この物置が無かったらもう少し庭を広く使えますが、この物置のお陰で作業用具や脚立、クロスバイクまで収納できるので欠かせません。これ以外に家屋の裏側に半坪の園芸専用の物置もあり、こちらは雪かきスコップ、土農耕具、噴霧器、ペイントや関連資材、そして園芸薬品や肥料大袋を収納しています。

剪定・誘引後

剪定前、ヒマラヤン・ムスク

この角地にヒマラヤン・ムスクを地植えしており庭の左右に伸ばして誘引しています。ヒマラヤン・ムスクは最初に植えた薔薇の1本で我が家の主のような薔薇です。

剪定・誘引後

ヒマラヤンムスクは年間6回剪定します。花前、花後、梅雨明け、夏の終わり、10月、12月と行います。花前には花芽の無い長い枝を切ります。
ヒマラヤン・ムスクは大型コンテナで栽培するとボリュームは3分の1になり、扱いやすくなります。

フェンス壁面の薔薇の剪定と誘引

主庭は南向きですが、フェンスの壁面に仕立てた薔薇は10月から3月まで全く陽が当たりません。4月からは午前中旭日があたりますが、午後は日陰になります。フェンスの上は4月から秋まで陽があたるため、ヒマラヤン・ムスクはフェンスの上を伝わって旺盛に伸びます。

ロープ・ア・ラ・フランセーズはオベリスクに絡ませていましたが、枝が良く伸びるため、今年はオベリスクに絡ませないでフェンスに誘引しました。ただ枝がオベリスクの中に入り込んでしまったため、オベリスクの位置はそのままで、薔薇の枝だけを誘引しました。

手前のペルル・ドールはガゼボの壁面に誘引していますが、植え場所が悪いためかあまり伸びません。その奥のフェンスにダマスクのまだむ・アルディを植えていますが、
陽が全く当たらないので、何とか頑張っています。その隣にはハイブリッド・ムスクのコーネリアを植えていますが、こちらの方は落葉せず頑張っています。

剪定後の枝

薔薇の枝はトゲがあるので、大量に発生する際は、家庭用ごみ袋を避けて90リットルの厚手のゴミ袋を使用します。我が家では生ゴミや室内ゴミは薄手の45㍑のゴミ袋、庭のゴミは植物や根などがあるためやや厚いゴミ袋を使用しています。

古い土壌は量が少ない時は庭に撒きますが、量が多くなると車で積んで見沼田んぼの畑の脇に捨てています。