25薔薇友訪問記22、綿貫さんの庭
綿貫さんとお会いするのは実に6年ぶりで、しかも綿貫さんの庭を訪問するのは初めてです。
綿貫さんは私がガーデンセンターで薔薇教室を行っている時の常連のメンバーでした。綿貫さんは控えめな方でご自身についても語ったことはありませんでしたが、とても薔薇好きだということは直ぐ分かりました。
昨年から私の車で北本オープンガーデンに同行して頂いた篠崎さんは、月に一度鴻巣市の施設花久の里のローズガーデンでボランテイアで薔薇の手入れを行っており、綿貫さんもボランティアで薔薇の手入れを行っており、友人の間柄だと知りました。今年は私が鉄道で北本に行きオープンガーデンは篠崎さんの車に同乗して回ることになり、その足で綿貫さんの庭も訪問することになったのです。
あの薔薇好きな印象だった綿貫さんがどんな庭を作られていたか、訪問してよく分かりました。そこには極めて正統的なシュラブローズガーデンが作られていたのです。

綿貫さんの庭に着くと最初に、株元から頭上高くびっしりと緑の葉の中に花が点在する、ランブラーローズの壁が眼に飛び込んで来ました。これを見た瞬間、綿貫さんはシュラブの薔薇庭づくりをやっているなと想いました。

良く茂ったランブラーとクレマチスのアーチを潜ります。この先はどのような光景が広がっているか、初めて見る薔薇庭に期待が弾みます。

庭に入ると、最初に眼にしたランブラーローズの壁の裏側が薔薇の葉の影から見え隠れしていて、薔薇の壁は園芸支柱やパイプ支柱を連結させるDIYで仕立てていることが分かりました。
薔薇の壁は頭上高く聳え、アーチに仕立てた薔薇は頭上から花が降るようです。またアプローチや花壇の空間はオベリスクを多用し、シュラブローズの性能を目いっぱい引き出しながら、ナチュラルな雰囲気のシュラブ系のローズガーデンが出来上がっていました。

ここもパイプ支柱とクリップを使用し頑丈なスクリーン仕立てを行っています。薔薇の枝が成長すれば支柱の強度は倍増します。
シュラブ系の樹高の低い薔薇は宿根草をミックスさせながらナチュラルなボーダー花壇を形成しており、頭上、目線、目下、足元と見事に薔薇を纏めています。これは口で言うほど簡単でなく、品種選びから始まって高度なテクニックが必要です。

商業用の広大なローズガーデンと異なって、スペースが限られた個人の庭で薔薇の美しさを最大限生かすためには、薔薇を平均的な高さで畑のように並べるのではなく、枝を伸ばして大型に成長するシュラブローズを中心に仕立て技術を伴って空間を活用し、重層的な光景をつくることが理想です。
シュラブローズを大型に仕立てるためには、薔薇の能力を知った上で、空間に広がる薔薇をサポートする仕立て技術と、大型のシュラブローズを見苦しくない状態に維持して行くメンテナンス技術が必要になります。

シュラブローズを大型に成長させて空間に仕立てて行くためには、個々の薔薇の性質を把握したう上での庭のデザイン構想力が必要で、メンテ技術は何よりも薔薇に対する愛情と根性が必要とされます。
こういったたゆまない要素が結合して、重層的な美しい薔薇庭ができるのです。綿貫さんの庭はこれが実現されています。

私はデビット・オースチンとピーター・ビールズの著作を翻訳しながらシュラブローズとその庭づくりを学びましたが、彼ら2人ともローズガーデンを作る際、ピンク系が主で白系が加わり両者で約6割以上占めれば、自然に美しく纏まると言っています。なぜならピンクと白は薔薇の原種当初のカラーで他の色は後世作られたカラーだからです。
また2人ともオレンジ系の挿し色に使用する薔薇を好み、多くのオレンジ系やアプリコットの薔薇も作出しています。

懐かしいダブリン・ベイが植えられていました。
私がボーダー花壇の背景に2本のハイブリット・テイの枝代わりの赤の無名のクライマーを植えましたが、初めて咲いた姿がイメージに合わず知人に譲ってしまいました。その反省から英国の薔薇図鑑で優秀な赤薔薇を探した結果、1本がダブリン・ベイでもう1本はギニーでした。ダブリン・ベイは植え場所が悪く本領を発揮しませんでしたが、ギニーは長い間我が家の壁面を飾りました。ダブリン・ベイほど鮮やかな発色の良い赤はなく、ギニーほど香りが良く品の良い赤はなく、両者とも赤系クライマーの最高品種と想っています。
綿貫さんの庭のダブリンベイは、庭に入ったときから、発色の良い赤色が眼に入りました。庭の奥に誘導するためには最高の仕立てです。

シティ・オブ・ヨークです。このクライマーの照葉の暗緑色の葉と白のセミダブルの花とのコンビネーションは抜群です。薔薇は葉と花色との調和も重要です。
シティ・オブ・ヨークはドロシーパーキンスを親バラにしているため強健で大型の壁を作ります。
ダブリン・ベイとシティ・オブ・ヨークを組み合わせた壁面仕立ては、綿貫さんの庭のフォーカル・ポイントのような気がします。

アイアスバーグがあれほど愛されるのは、白い花と柔らかなややライム系の葉とのコンビネーションが美しく、大型に仕立てることによってその場所を確実に美しい空間にしてくれるのです。庭の雰囲気をやわらげ、多くの薔薇を繋げるために、アイスバーグの仕立て場所は理にかなっているようです。

午後になるまで雨が続きました。ようやく雨が上がりましたが、雨雲に覆われ雨に濡れた薔薇は乾きません。

枝が細く自立しにくいシュラブローズを中性種の宿根草とボーダー花壇でミックスさせるのはとても難しいのに上手く纏めています。

レディ・オブ・シャーロット?庭の中でこのアプリコットカラーが引き立ちます。

シュラブローズの面目躍如の光景です。

庭の一画は家庭菜園スペースです。その境には鉢薔薇を並べています。鉢薔薇を見ると、野球のピンチヒッターかブルペンでのリリーフピッチャーを連想してしまいます。
いざ出動のための待機しているのでしょう。